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【獣医師が解説】犬の血液検査項目から分かることと見方を徹底解説

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愛犬の体調がなんとなく悪いな、と思っても犬はしゃべってくれません。もし犬とお話ができれば、ある程度どの部分が悪いのか予測ができます。しかし実際はそうはいきませんよね。

そんな時によく行われるのが血液検査です。血液検査をするとある程度の内臓の状態を把握することができます。

また、健康診断でもよく血液検査は用いられます。血液検査の項目に関しては人間の血液検査と似たような項目です。

検査結果は獣医師により説明されます。馴染みのない単語で理解しにくかったり、後で内容がわからなくなったりすることもあるかもしれません。少し予備知識があると、検査結果のお話の時に理解しやすくなります。

今回は血液検査の主な項目に関して、簡単に解説していきたいと思います。

犬の血液検査でわかることはたくさんある

血液検査をすることでおおまかな体の状態が分かります。

フィラリア検査

みなさんに一番馴染みがあるのは、毎年行われるフィラリア検査かもしれませんね。フィラリア検査では、ミクロフィラリアを見る方法や、抗原検査によって、フィラリアに感染していないかを確認します。

検査をする理由は既にフィラリアに感染していると、予防薬を飲むことができないためです。

犬のフィラリア症と予防方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

貧血

診察では歯茎の色で貧血があるかどうかをチェックします。歯茎が黒い子は分かりにくく、
血液検査をすることで数値が確認でき正確に判断することができます。

内臓系の疾患

糖尿病や腎臓病を始めとした内臓系の病気の確認ができます。
また、高齢になってくると罹患しやすい、甲状腺などのホルモンの病気を発見するきっかけになります。

愛犬の口臭と内臓系疾患については、こちらの記事で詳しく解説しています。

血液検査の項目と見方

血液検査を行った時には必ず獣医師からの説明があるかと思います。血液検査ではあらゆる可能性を考えながら、検査項目を組み合わせて読み解いていきます。この項目の数値が上がったら、この病気!と、なかなか単純には診断できません。

そのため血液検査を見て飼い主さんが診断する必要はありません。しかし、検査項目を少し知っておくと検査結果を聞くときに少し理解しやすくなるかもしれません。

ここでは簡単に、血液検査の見方や項目に関して解説していきます。血液検査は血球検査と生化学検査の大きく2つに分けられます。

血球検査

血液の血球の大きさや数の検査です。赤血球、白血球、血小板の3つで構成されます。

赤血球

血液が赤く見えるのは、この赤血球が赤いからです。そのため、血色が悪いと貧血や循環が悪いと考えられます。働きとしては酸素を体中に運びます。

赤血球の数値が低いと貧血になっている可能性があります。
数値が高い場合は、脱水症状や血液の濃縮などを考えます。

白血球

白血球は細菌やウイルスなどの外敵から守るための、防御や免疫に関係します。白血球の数値が高いと炎症や感染、ストレスなどを疑います。

白血球の全体数だけでは判断できませんが、顕微鏡で白血球の分類をするともっと詳しい情報が得られます。白血球の数値が低い場合は、ウイルスや免疫関係の疾患を考えます。

  • 白血球の数値が高い…炎症、感染、ストレスなど
  • 白血球の数値が低い…ウイルス、免疫関係の疾患など

血小板

血小板は血液が固まる際に関係しています。
血小板の数値が低い場合は、血が固まりにくく出血しやすい状態です。自己免疫疾患などさまざまな病気を疑います。

  • 血小板の数値が低い…自己免疫疾患など

生化学検査

生化学検査では肝臓や腎臓、膵臓など内臓系の状態を調べる検査です。さらにホルモン検査などを行うこともできます。

常にすべての項目を測定するわけではありませんが、犬の状態によって必要な項目を組み合わせて検査を行います。
ここでは主要な項目に関して簡単に解説していきます。

肝酵素

  • ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)
  • AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
  • ALP(アルカリホスファターゼ)
  • GGT(ガンマグルタミルトランスフェラーゼ)

これらはいわゆる肝酵素と呼ばれるものです。詳しい解釈は複雑ですが、主に肝臓系、胆嚢系に問題があると上昇することが多いです。

ALPは使用しているお薬(ステロイド)で数値が上がることがあります。そのため、ALPの数値が高い場合は、外用薬や飲み薬でステロイドを使っていないか確認してください。

特に動物病院を転院した場合は、通院履歴がないため使用しているお薬の把握ができません。使用しているお薬などがある場合は必ず伝えるようにしてください。

  • ALPの数値が高い…ステロイドの使用など

総コレステロール・中性脂肪

TCho(総コレステロール)、TG(中性脂肪)に関しては、食後の採血で数値が上がることがあります。そのため血液検査はできるだけ絶食状態で臨んでください。

数値が高い場合は、高脂血症の状態です。高齢の場合は甲状腺機能低下症などのホルモン疾患があるかもしれません。疲れやすい、元気がない、体重が増えてきた、などの症状が見られる場合は疑いホルモン検査を行います。

  • TCho(総コレステロール)、TG(中性脂肪)の数値が高い…高脂血症、高齢の場合は甲状腺機能低下など

血糖値

GLU(血糖値)の数値が高い場合は、糖尿病の可能性があります。飲水量の確認や尿検査を実施します。数値が低い場合は低血糖の状態です。インスリノーマなどの腫瘍も考慮していきます。

  • GLU(血糖値)…低血糖、膿瘍など

腎臓関連

BUN(尿素窒素)、CRE(クレアチニン)は腎臓に関連する項目です。尿素窒素及びクレアチニンの数値が高い場合は腎臓病の可能性があります。

尿素窒素に関してはお肉を食べた後に採血をすると上がる傾向があります。そのため、できるだけ絶食での測定をお勧めします。

また、消化管で出血が起きている場合にも数値が上がります。もし便が黒かったり血がついていたりする場合は獣医師に報告してください。

腎臓病の場合、たくさんお水を飲み、たくさんおしっこをします。そういった症状がないか、さらに尿検査を行うことで腎臓が問題ないかを調べていきます。

腎臓病に関しては、腎機能がかなり低下しないと血液検査の数値に現れません。
そのため、ある程度の年齢になったらSDMAと言う早期腎臓病が発見できる腎マーカー検査をすることをお勧めします。

  • BUN(尿素窒素)、CRE(クレアチニン)の数値が高い…腎臓病など

犬の血液検査を受けるタイミング

おそらく子犬が最初に受ける血液検査は、避妊・去勢手術の術前検査の場合が多いかもしれません。

犬の避妊手術についてはこちらの記事で解説しています。

犬の去勢手術についてはこちらの記事で解説しています。

小さい頃に血液検査をしておくことで、先天性の病気やその子の数値のベースが分かります。血液検査の数値が基準値内でも、もともと数値が高い・低いというのが分かっていると今後の診断に役立ちます。

健康診断目的で血液検査を受けるのであれば、成犬であれば年に1回をお勧めしています。そして、高齢になってきたら半年に1回が理想的です。

症状として飲水量や尿量が増えたりする場合、体重に変化がある場合など、何か症状が見られる場合はその都度、血液検査をすると良いでしょう。

そうは言っても、健康診断にいつ行くか迷ってしまうことが多いと思います。おすすめは、フィラリア検査の時です。フィラリア検査のときには血液を少し抜きますので、多めに採血してもらい、血液検査も一緒に行うと良いでしょう。そうすれば年に1度の採血で済むので、愛犬の負担も少ないですね。

血液検査を通して健康に気をつけよう

人間もそうですが、元気な時はなかなか病院には行きませんよね。しかし愛犬は人間の何倍もの速度で生活しています。犬の1年は人間のおよそ4年に相当します。そのためあっという間に歳をとり、気づいた時には病気が進行していることも少なくありません。

健康診断として血液検査をすることで、病気があった場合には早期発見につながります。病気は発見が早いほど治療の選択肢は広がっていきます。

今回は血液検査について解説していきました。少し知識をもっておくと血液検査の結果の理解が深まりそうです。愛犬の健康状態をより詳しく把握し、長生きを目指しましょう。

この記事を書いた人

千葉 恵
獣医師

日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事

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