ワンカルテ > 愛犬の健康を守る > 【獣医師が解説】愛犬から口臭がする?!臭いの種類でわかる犬の体調とは?

【獣医師が解説】愛犬から口臭がする?!臭いの種類でわかる犬の体調とは?

最終更新日:

愛犬と触れ合っていて、口臭を感じたことはありませんか?
口臭にはいろいろな種類がありますが、その大半は歯周病によるものです。歯周病菌による口臭の場合、何もケアせず放置してしまうと歯周病がさらに悪化し、くしゃみ・鼻水・顔の腫れ・骨折などの症状がでてきます。手遅れになる前に歯磨きなどの口腔ケアを行って歯周病を防ぎましょう。

犬の口臭の種類で体調がわかる

口臭には「生理的な口臭」と「病的な口臭」があります。
人間の生理的な口臭には「起床時口臭」「空腹時口臭」「加齢性口臭」「緊張時口臭」「口呼吸性」「ホルモン性」「食べ物の種類によるもの」があり、唾液の分泌、空腹時に作られるケトン体、臭いの強い食べ物などが原因となります。

犬ではここまで分類することはあまりありませんが、同じように考えられると思われます。

生理的な口臭と対策

生理的な口臭に関しては病気ではないので心配することはなく、食事の内容や回数を変更することで口臭は軽減します。

歯周病による口臭と対策

病的な口臭はほとんどの場合、歯周病によるものです。
歯の周りに歯石ができると、酸素に触れることを好まない嫌気性菌が発生します。この嫌気性菌がいわゆる歯周病菌です。歯周病が進行するほど歯周病菌は増殖していきます。

口臭の主な原因は、歯周病菌が放つ揮発性硫黄化合物の「硫化水素」や「メチルメルカプタン」です。

  • メチルメルカプタン…キャベツが腐ったような臭い
  • 硫化水素…卵の腐ったような臭い

メチルメルカプタンは硫化水素よりも臭気が強い物質として知られています。環境省の調査によると、メチルメルカプタンは硫化水素の約10分の1から20分の1の濃度で同等の臭気を放つと言われています。

人間の口臭の原因でもあり、悪臭防止法や大気汚染防止法で規制物質・特定物質として指定されています。それほど強烈な臭いという事ですね。

軽度の口臭対策

軽度の場合、まずは歯磨きを行ってください。臭いがきつい場合は、すでにかなりの歯周病菌が増えており、麻酔下での歯周病処置が必要かもしれません。歯石除去や抜歯などを行い、その後もお家での口腔ケアが必要です。

重症の口臭対策

すぐに動物病院で診察を受けたほうがよいケースがあります。

口腔内腫瘍があるケース

比較的高齢犬で口臭がした場合、歯周病の他に口腔内腫瘍があります。口腔内腫瘍ではよだれが多く出る、出血を伴う場合があり、強い臭いを放ちます。

口周りや前肢がよだれでいつも濡れている、食欲が落ちる、出血があるなどの場合は口の中、舌の裏側にしこりが無いかを確認します。疑わしい場合や分からない場合はかかりつけの動物病院を受診してください。

全身・内蔵疾患があるケース

口の中以外の原因では、全身の腫瘍や腎臓系・肝臓系疾患などがあります。こちらも高齢犬で多くみられ、特に腎臓や肝臓では出ていくはずの毒素が排泄されないために臭いを放ちます。

多飲多尿、食欲減退などまずは何か症状がないかを確認してください。高齢の犬では普段から健康診断を兼ねての血液検査や画像検査を行うことで早期発見につながります。

口臭がしてくる年齢とは

3歳以上の犬の8割が歯周病になっていると言われています。歯周病の程度が重度なほど臭いが強くなっていくので3歳くらいには口臭が気になってくる犬が増えてきます。
また、歯周病は全ての犬が罹患する可能性がありますが、その中でも歯周病になりやすい歯の状態や、なりやすい犬種などがあります。

乳歯遺残がある場合

犬種によって異なりますが、たいていの犬では生後6ヶ月頃には乳歯が生え変わり永久歯になります。しかし自然に乳歯が抜けない場合があり、このような状態を乳歯遺残と言います。

犬の場合、乳歯が抜け落ちた後に永久歯が生えるのではなく、乳歯が抜けていない状態から永久歯が生えてきます。そのため、乳歯遺残になると乳歯と永久歯がどちらも生えている状態になります。そうすると歯が重なった状態になるため、乳歯と永久歯の間には歯垢が溜まりやすく歯周病になりやすくなります。

年齢的に、避妊・去勢手術をする時期でもあるため、乳歯遺残がある場合は同時に抜歯をすることをお勧めします。避妊・去勢手術をしない場合でも、乳歯遺残がある場合は積極的に麻酔下での乳歯抜歯をしてあげることで、将来の歯周病を予防することができます。

犬の種類によっても歯周病のなりやすさが異なる

年齢だけではなく、犬種によっても歯周病のなりやすさは異なります。

チワワ、ヨークシャーテリア・ポメラニアンなど

もともと欠歯といって歯が何本か無い場合があります。チワワ、ヨークシャーテリア・ポメラニアンなどは顎が小さい犬種なので、むしろ欠歯により歯が少ない方が隣同士重なることなく、綺麗な歯並びになりやすいです。反対にすべての歯がそろっていると、歯同士が重なってしまいやすいといえます。また乳歯遺残も多い犬種なので、生後半年頃に乳歯が残ってないか確認しましょう。

ミニチュアダックスフンド、トイプードルなど

ミニチュアダックスフンド、トイプードルなどは、比較的歯周病になりやすい犬種です。動物病院でも歯石除去でいらっしゃることが多いです。上顎での歯周病が起こりやすく、頬が腫れたりくしゃみや鼻水がでたり、と症状がでる場合が多くみられます。

シーズー、パグ、フレンチブルドックなどの短頭種

シーズー、パグ、フレンチブルドックなど短頭種の場合は、口と鼻の構造上歯並びが悪く歯が重なった状態が多いため歯周病になりやすい犬種といえます。

大型犬用中型犬

大型犬用中型犬は、小型犬に比べると歯周病の発生率は低いです。一方で、おもちゃなどで歯が折れてしまうことが多いため注意が必要です。

人と同様に、口の構造や唾液の性状なども関係するので個体差がかなりありますが、犬種によっても歯周病リスクは変わってきます。いずれにしても共通していえるのは、口臭の有無にかかわらず、歯磨きなどの口腔ケアは早めに始めた方が歯周病になるリスクは軽減します。

歯石がすでに形成されていると歯磨きでは対応できません。歯石除去をした上で、歯周ポケットに菌が増えないようケアしていくことで口臭を減らすことができます。

愛犬の口臭が気になったら早めに対策を!

愛犬のお口が臭う・・・、と思ったらそれは歯周病の可能性が高いです。まずは歯磨きなどお家でできる口腔ケアを行いましょう。それでも臭いがとれない場合は、ホームケアだけでは難しいかもしれません。見た目が綺麗でも、歯周ポケットに菌が増殖してしまうと口臭が発生します。

また、ほとんどの場合が歯周病による口臭ですが、腎臓が悪いなどの内臓系疾患でも口臭がします。お水をすごく飲む、尿がたくさん出る、などの症状がある場合は早めにかかりつけの動物病院への受診をお勧めします。

口腔内の問題でも、その他の臓器の問題でも放置してしまうと悪くなる一方です。早期発見し早期治療することで愛犬の健康維持につながります。愛犬の口臭が気になったらまずはお口の中の確認とその他の気になる症状がないか確認してくだいね。

犬の歯周病の症状と体に起きる影響を解説している記事はこちらです。ぜひあわせて読んでみてください。

この記事を書いた人

千葉 恵
獣医師

日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事

あわせて読みたいコラム

あわせて読みたいコラム