ワンカルテ > 愛犬の健康を守る > 【獣医師が解説】愛犬をお風呂に入れる頻度や正しい入れ方、適切なお湯の温度も解説

【獣医師が解説】愛犬をお風呂に入れる頻度や正しい入れ方、適切なお湯の温度も解説

最終更新日:

人は赤ちゃんの頃からお風呂に入っていて、人にとって体を洗うことは習慣になっていますね。一方で、動物たちは自らお風呂に入る事はなかなかありません。お猿さんが温泉に入るなど、特殊な場合のみですね。

野生で生活している場合は、お風呂に入ることはあまり必要ないのかもしれません。しかし、人と一緒に暮らすためには、ある程度清潔に保ちたいですよね。

今回は、愛犬のシャンプーの方法を中心に解説していきます。

犬をお風呂に入れるタイミング

お風呂に入ったり体を洗ったりすることは、皮膚や被毛の汚れを取ることが目的です。
犬の皮膚の表面には、皮脂、汗、角質、排泄物、常在菌の他、食べ物や土など様々なものが付着しています。

日常生活でこのような汚れは避けることは難しく、皮膚に汚れが付着した状態では新陳代謝を妨げてしまいます。

皮膚の汚れの明らかな場合は、すぐにおうちでのシャンプーやトリミングが必要です。
また見た目に問題がない場合でも、ブラシで毛をとかしたり、定期的にお風呂に入れてあげたりする事は清潔に保つために良いことです。

犬のお風呂の理想的な頻度

犬のお風呂の頻度は、その子によって異なります。
あまり体を洗浄しすぎると、皮膚のバリア機能を悪くしてしまう可能性があります。

そのため、愛犬がどのくらいの頻度で洗うと皮膚の状態が良く維持できるかを見る必要があります。
月に1度で問題ない子もいれば、例えばアトピーなどを持っている子であれば、週に1回程度が理想的なこともあります。
まずは2週間に1度程度のペースで洗ってみて、間隔を短くあるいは長くしていくと良いでしょう。

また、現在の愛犬の皮膚の状態が気になる場合は、一度動物病院で確認するのもいいかもしれませんね。

基本的な犬のお風呂の入れ方

人は体を洗って、シャワーまたは湯船に浸かります。
犬の場合は毛があることや皮膚がデリケートなため、ひと手間必要です。

①毛をとかす

まずはシャンプーをする前に、体全体をブラシでとかします。
髪が長い方も洗う前にヘアブラシで髪をとかすと汚れが落ち、シャンプーが泡立ちやすくなりますよね。

犬も同様にブラシでとかしてあげることで、ある程度の汚れが落ち、その後のシャンプーが泡立ちやすくなります。

②皮膚にトラブルがないかを確認する

肌がベタベタと脂っぽい、ガサガサしたかさぶたがある、痒みがあるなど、皮膚がいつもと異なる場合は皮膚病の疑いがあります。
その場合は、一般的なシャンプー剤のみだと不十分なことがあります。

場合によって、オイルクレンジングを行ったり、薬用のシャンプーを使ったりすることがあります。状態によって動物病院の受診を検討してください。

③予洗いをする

30℃前後のぬるま湯で体全体を十分に濡らします。
十分に濡らすことである程度の汚れを落とすことができます。
この予洗いが不十分だと、シャンプーが泡立ちにくく、成分も浸透しにくくなります。

④シャンプーを泡立てる

シャンプーを原液のまま体につける飼い主さんが多いですが、できれば泡立てたシャンプーを使った方が効果的です。

シャンプーをきちんと泡立てることで、洗っている際の皮膚の摩擦を減らすことができます。さらにシャンプーのつけすぎも防止できて経済的です。

泡を作る際は、泡立てネットやスポンジを使用すると簡単に作れます。

⑤実際にシャンプーをつける

泡立てたシャンプーを体につけます。
シャンプーを揉み込む際は、毛の流れに沿ってください。
毛の流れに逆らって揉み込むと、皮膚への刺激になってしまいます。

薬用シャンプーを使用している場合は、種類によっては数分時間をおかなければならないものがあります。使用する前に確認しましょう。

⑥お湯で十分にすすぐ

シャンプーが残らないようにしっかりと、時間をかけてすすいであげてください。
お湯の温度も注意してくださいね。

⑦保湿剤を使う

シャンプーのみだと、皮膚が乾燥しやすくなります。
そのためシャンプーが終わったら、できるだけ水気を切った状態で保湿剤をつけてあげましょう。

また保湿効果のある入浴剤を入れて、入浴するのもお勧めです。

⑧乾かす

犬の皮膚は敏感です。できるだけタオルドライで水気をとってあげましょう。
ゴシゴシすると皮膚を傷つけてしまいます。

大きいタオルで水気をタオルに吸わせるように、優しく拭いていきます。
ドライヤーを使用する場合は、温風だと皮膚に痒みが生じる、または乾燥の原因になります。
できるだけ冷風で乾かしましょう。

生乾きの状態は、皮膚のバリア機能が弱くなってしまいます。
乾かす事は大事ですが、乾かしすぎも乾燥によるバリア機能の低下になります。
ほどほどに行いましょう。

皮膚病などで液体や軟膏の外用薬をもらっている場合は、この時点で使用してください。
皮膚が清潔な状態のため、薬の成分が浸透しやすく効果が期待できます。

適切なお湯の温度

お湯の温度に関しては、30℃位を目安とします。30℃は実際触ってみると、かなりぬるい温度です。
人間は40℃近い湯船に入りますが、犬の場合では温度が高すぎるので注意してください。

愛犬をお風呂に入れるときの注意点

温度に注意

入浴やシャンプー、ドライヤーを使用する際など、それぞれ温度に気をつけてください。
犬の皮膚は人に比べて熱の影響を受けやすいです。
熱いお湯や熱風を使用すると、乾燥やかゆみを生じたり炎症を起こしたりします。

回数に注意

人が毎日お風呂に入るからといって、犬も同様が良いとは言えません。

個々によって、理想的なお風呂の回数は異なります。

肌の状態や、シャンプーの種類等によっても変わってきます。
洗浄力の強いシャンプーで洗いすぎると、肌のバリア機能が低下し、皮膚病になってしまうため注意が必要です。

まずは2週間に1回ほどのペースで行ってみましょう。皮膚の調子を見て、乾燥するようであればもう少し間隔を長く、ベタつきや汚れがあるようであれば間隔を短くしてみましょう。

適切なシャンプーを選びましょう

犬のシャンプーには、たくさんの種類があります。
シャンプーの種類によって、それぞれ目的が異なります。

一般的には界面活性剤の種類によって、洗浄力や皮膚への刺激が変わってきます。
汚れがすっきりと落ちるものは、皮膚に刺激が強い傾向があります。
アトピー持ちや刺激に弱い皮膚の場合は注意が必要です。

愛犬の皮膚が、乾燥肌か脂性肌なのかによっても選ぶべきシャンプーは変わってきます。

いろいろな種類を試すことや、決めにくい場合は獣医師やトリマーに相談するのも良いですね。

毛をとかすときは優しく

スリッカーブラシで毛をとかす際に、力が入りすぎると皮膚を傷つけることがあります。
傷つけないように優しく毛をとかしてあげてください。

愛犬がお風呂を嫌がる時はどうすればいい?

最初から完璧を目指そうとするとお互いストレスになってしまいます。
お水を怖がるようであれば、まずはドライシャンプーなどがお勧めです。
体を濡らさなくても使えるアイテムのため、チャレンジしやすいです。

慣れてきたら足先や、部分的に洗えそうな部分から洗っていきます。最初は短時間で済ませるようにします。
徐々に慣れてきたら体全体を洗えるように目指していきましょう。

嫌なことを無理にしてしまうと、手足を拭くのすら難しくなってしまいます。
焦らず、ゆっくりと慣れさせてあげてくださいね。

お風呂が苦手なワンちゃんも多いですが、歯磨きが嫌いな子もたくさんいます。
なかなかうまく歯磨きができなくて悩んでいる飼い主さんはぜひこちらの記事も併せてご覧ください。

清潔な体で快適に

犬も人と同様、汗や皮脂などの臭いの原因が体に付着しています。
また、最近では犬もアトピー性皮膚炎などの皮膚病が増えてきています。

シャンプーは汚れを取るだけではなく、皮膚病にも有効です。
しかし誤った方法でシャンプーをするとむしろ皮膚の状態を悪化させてしまいます。

愛犬に適切なシャンプーをすることで健康な皮膚の状態を維持し、清潔に快適に過ごしていきたいですね。

この記事を書いた人

千葉 恵
獣医師

日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事

あわせて読みたいコラム

あわせて読みたいコラム