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【獣医師が解説】犬の歯磨き嫌いを克服しよう。愛犬が歯磨きを嫌がる原因と対策とは?

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いざ愛犬の歯磨きをしようとすると嫌がってしまう…。そんな経験はありませんか?
犬は口元を触られることを嫌がります。そして嫌がることを無理に続けてしまうと余計にストレスとなり、どんどん歯磨きができなくなってしまいます。
まずは口元を触る練習から始めましょう。そして慣れてきてから本格的にデンタルケアグッズを使って、歯磨きをしていきましょう。

犬が歯磨きを嫌がる主な原因とは?

愛犬の口の中に、いきなり歯ブラシを突っ込んで磨こうとしていませんか?戦いになっていませんか?

犬は歯磨きをする理由が分かりません。意味を説明することもできません。いきなり口の中にシートや歯ブラシなどの異物が入れられたら・・・人でもびっくりしますよね。

歯磨きをするには口を触る必要がありますが、目や鼻などデリケートな器官が集まっている場所なので、とても敏感ですし、無理強いをするとケアそのものが嫌いになってしまう可能性があります。

デンタルグッズを嫌なものだと認識してしまうと、次に飼い主さんがそれらを手に持っているだけで逃げてしまい、歯磨き練習がままならなくなります。

犬の苦手を克服!歯磨きを上手にできるようにするには?

歯磨き上手になるには、いくつか方法があります。順番に試してみてください。

STEP1:まずは口元を触ることに慣れましょう

普段触られて喜ぶような頭や顎を撫でて、犬をリラックスさせてあげます。
犬が落ち着いていることを確認できたら口元を触ってみます。口元にタッチできたらご褒美をあげる、を何度も繰り返します。美味しい犬用歯磨きペーストをご褒美にすれば一石二鳥です。

口元が触られるようになったら、続いて歯や歯肉に指でタッチしてみましょう。口をこじ開ける必要はありません。

上唇を少しずらして上の犬歯(きば)やその後ろの歯を触ってみましょう。歯や歯肉に触れたらご褒美をあげます。これを何度も繰り返しながら触れる範囲を奥歯や前歯にも広げていきましょう。

このとき歯に触れながら歯並びや形状を知っておくと、今後歯ブラシを使う際に磨きやすくなります。

上の歯の外側全体を触れるようになったら歯磨き準備の完了です。

STEP2:実際に歯を磨いてみましょう

口元タッチに慣れてきたら、次は犬の歯を磨いていきましょう。

いきなり歯ブラシをつっこんではいけません。これはとても重要です。

まずは歯ブラシを見せたらご褒美を与えます。これを繰り返し、歯ブラシは好きなもの・楽しいものと認識させます。歯ブラシに歯磨きペーストをたっぷりつけて舐めさせるのも良い方法です。その時にブラシをかじらせないように注意しましょう。

次に歯ブラシで歯茎をタッチできたらご褒美を与え慣れさせます。ブラシを使って歯磨きペーストを歯に塗りつける練習も効果的です。

歯ブラシを口に入れても嫌がらなくなったら、実際に磨いていきます。力は入れず撫でるように、歯や、歯と歯の間を磨いていきます。指で練習した時と同じ順序で歯の外側から始め、磨ける箇所を増やしていきましょう。

歯の内側は磨ければ理想的ですが、犬は口を開けたままに保つのが苦手ですから、外側より難易度が高いです。しかし、外側よりも歯垢は付きにくいので焦らずに。まずは外側磨きが上手になるよう慣れていきましょう。

初めから完璧に歯磨きを行おうとすると時間がかかって愛犬が嫌になってしまいがちです。歯ブラシや歯磨きペーストを見せたら愛犬が喜んで寄ってくる状態が、良い練習ができているサインです。
愛犬や飼い主さん双方のストレスにならないように、焦らずゆっくりと歯磨きを受け入れてもらいましょう。

犬の歯磨きQ&A

犬の歯磨きでよくあるQ&Aをまとめました。

Q1.歯磨きをすると犬が痛みを感じているようです。続けてしまって大丈夫ですか?

獣医師の回答

痛みを感じてしまっている状態で無理に歯磨きを続けてしまうと、犬にとってストレスになり、歯磨きが嫌いになってしまいます。まずは痛みの原因を確認しましょう。
歯磨きをする際に、ブラシが乾燥していると歯肉を傷つけてしまい、痛みが生じます。乾燥している場合は、歯磨きペーストやお水などを付けて濡れた状態で行います。

既に歯周病などのお口のトラブルが生じている場合には、痛みを感じることが多いです。歯肉が赤い、腫れている、出血する、口臭がする、歯がぐらついているなどの症状がある場合には無理して磨こうとせず、まずはかかりつけの動物病院に相談しましょう。

Q3.歯磨きが上手にできたら、ご褒美におやつをあげて良いのでしょうか?

獣医師の回答

歯磨きが上手にできたら、ご褒美を与えることは許容しましょう。
食べかすもやがて歯垢になり、悪影響を及ぼす可能性は否定できません。

しかし、犬は歯磨きがなぜ必要なのか分かりません。歯磨きを楽しい時間にするために、ご褒美を与えることはやむを得ないことと思います。あまり噛まずに飲み込めるような、口に残りにくい食材・形状のおやつを選んであげましょう。

おやつの他にもたくさん褒める、歯磨きを終えたらすぐにお散歩に行く、など愛犬が喜ぶことをしてあげるのも良い方法です。

Q3.人間の歯磨き粉や歯ブラシで犬の歯磨きをしても大丈夫でしょうか?

獣医師の回答

歯磨き粉は必ず犬用のものを使いましょう。歯垢を付着しにくくする、菌の繁殖を抑制するなど効能のあるタイプがお勧めです。

人間用の歯磨き粉は絶対に使ってはいけません。
人間用の歯磨き粉は歯を磨いた後に、水ですすぎ吐き出すことを前提に作られています。犬はすすいで吐き出すことができないため、そのまま飲み込んでしまい、お腹を壊すなどの消化器症状を示すことがあります。

また、人間用の歯磨き粉に含まれる発泡剤も犬には必要ありません。
さらに人間用の歯磨き粉には犬には有害なキシリトールが含まれているものがあります。キシリトールを摂取すると、量によっては命に関わります。注意してください。

歯ブラシに関しては人間用でも問題はありません。その場合は赤ちゃんの仕上げ磨き用や小児用を選ぶとヘッドが小さく使いやすいでしょう。そして毛の柔らかいものを選びましょう。
犬用のものは毛が抜けにくく、ヘッドが小さいタイプが多いので、人間用のものが使いづらいと感じたら、犬用製品も検討して下さい。

Q4.歯磨きは1日何回行えば良いでしょうか?

獣医師の回答

少なからず1日1回は必要です。食べかすは1日で歯垢になり、それを3日放置すると歯石になると言われています。歯石に変化してしまうと歯磨きでは取れなくなってしまいます。

毎日すべての歯を完璧に磨けなくても問題ありませんが、歯垢が歯石にならないうちに取り去ることが重要です。

1回の時間を短くして何度か行い、1日かけて全ての歯をブラッシングできるよう小分けにしても構いません。

Q5.歯磨きガムは歯磨きの代わりになりますか?

獣医師の回答

歯磨きガムは、あくまでも歯磨きの補助的な位置づけです。
犬が食べ物を噛む時に使う歯は限定されているため、ごく一部の歯しかこすれません。その他の歯に対しては効果がありませんから、たとえガムを噛ませていても、歯磨きの代わりにはなりません。

与えるのであれば、大きい奥歯が効率よくこすれるよう、飼い主さんが手でガムを持ち、口の横から奥歯にガムを入れて何度も噛ませてあげるとより効果的です。左右の奥歯とも噛ませてあげましょう。

歯磨きガムのサイズが合わないと、噛みづらく効果が半減します。また、硬すぎる歯磨きガムは歯が折れてしまう危険性があります。手で曲げられる位、歯が食い込む位のものを選びましょう。

犬の歯周病を予防する方法についてはこちらの記事で解説しています。

歯磨きはあせらずじっくりと

もともと犬は口元を触られるのを嫌がるため、初めは歯磨きを難しく感じるかもしれません。まずは口元を触る練習から始め、愛犬も飼い主さんも無理なく続けられる楽しい時間にしていきましょう。

歯磨きを続けることで口臭を防ぎ、歯周病予防につながります。焦る必要はありませんが、お口のケアは必ず必要です。早速今日から仲良く始めてみませんか?

監修者コメント

歯磨きができない、というご相談をよくお受けします。お話を伺っていると大抵は、我慢しなさい!と愛犬を押さえつけ、いきなり歯ブラシをつっこんでガシャガシャ・・・それでは繰り返すほどに愛犬は歯磨きが嫌いになってしまいます。
犬たちも人と同じように第一印象はとても大切なのです。なぜ歯磨きが必要なのか説得することはできませんが、美味しい歯磨き粉をおやつに貰える楽しい時間と思ってもらえる工夫をしながらステップアップしていけば、老犬でも受け入れられるようになりますよ!
しかし、口の中にトラブルが有るとなかなか練習は進みません。3歳で80%は歯周病と言われている犬たち・・・若いから大丈夫と思わず、口臭が少しでも感じられる時は歯周病のサインです。歯科検診を受けてみてくださいね。

この記事を監修した人

石田ようこ犬と猫の歯科クリニック
獣医師・院長 石田陽子

麻布大学獣医学部獣医学科卒

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