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【獣医師が解説】動物病院の犬の歯石取りでかかる平均費用と治療の流れ

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最近愛犬のお口が臭う、口の中を見たら歯石がたくさん付いている…!そんな事はありませんか?

人間では歯医者さんで簡単に歯のクリーニングをすることができますが、犬の場合は歯石を取るために全身麻酔が必要です。そこで気になってくるのが費用の問題です。

検査や歯周病処置の内容、犬の状態によって費用は異なります。また、抜歯があると場合によっては倍近くの金額になるかもしれません。抜歯しない状態であれば、4万円くらいが目安になります。保険会社によっては保険適用になるので確認すると良いですね。

今回は、歯石除去での気になる費用や、どういった治療をしていくか解説していきます。

犬の歯石取りにかかる平均費用

犬の歯石除去の費用といってもなかなか想像できませんよね?
犬種や犬の状態、年齢などで大きく変わってきます。目安としては抜歯が無い状態であれば、およそ4万円程度は費用がかかります。

また、歯周病の治療として歯石を取る場合、保険会社によっては保険適用となります。
保険に加入している場合は、保険が効くかどうか確認しておきましょう。

歯周病にさせないために飼い主ができることは徹底的な予防です。予防方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。

歯石を取るためには、全身麻酔代、検査費用、歯石除去(歯周病処置)代の大きく3つが必要です。それぞれの内容や大まかな費用に関して見ていきましょう。

全身麻酔の費用

歯石を取るためには必ず全身麻酔が必要です。
最近ではホームセンターやペットショップなどで無麻酔での歯石除去を行っている場合があります。しかし、これは大変危険な行為です。

もし愛犬に持病があったら?歯周病が重度で顎を骨折してしまったら?想像すると怖くなります。

日本小動物歯科研究会やアメリカ獣医歯科学会でも、無麻酔での歯石除去に関しては危険であると警鐘を鳴らしています。無麻酔での歯石除去は痛みを伴う上に、歯の表面上しか綺麗になりません。歯の根元は十分に処置されないため、歯周病治療として意味がなく口臭もなくなりません。

さらに処置中に痛みを生じるため、歯を触られるのを嫌がるようになります。そうすると歯磨きがしにくくなり、お家での歯周病ケアができなくなります。

そういった理由で全身麻酔をかけて歯石除去を行うため、動物病院では費用がそれなりにかかります。

年齢や体重、持病の有無などによりますが、麻酔代として15,000円以上はかかりそうです。また、麻酔に伴い血管に点滴をつないだり、入院をしたりとその他に費用がかかってきます。

検査費用

麻酔がかけられるどうか、全身状態を見るために血液検査をします。どこまで詳しくみるかに関しては犬の状態、動物病院により異なります。目安は1万円以上です。

年齢によって、胸部のレントゲンや心電図などを行う場合もあります。レントゲンはおよそ5,000円程度、心電図は2,000円程度が目安です。

歯の状態を確認するために、歯のレントゲン撮影をします。人間の場合は処置前に行いますが、犬の場合は意識下では歯のレントゲン撮影ができません。撮影をすることで歯の状態を確認し、抜歯が必要かなどを見ていきます。歯のレントゲンの費用は5,000円程度が目安です。

歯石除去(歯周病処置)代

抜歯が無く歯石除去のみであれば、およそ10,000円程度が目安です。レントゲン上で歯の根元が既に腐ってしまっている場合は抜歯の必要があります。抜歯をせずに放置すると、隣の歯も悪くなり、骨が溶けて骨折しやすくなります。

抜歯の費用に関しては、抜く歯によって異なります。多根歯といわれる根元が分かれている歯は分割しながら抜歯をするため、時間もかかり技術的にも難しい処置になります。一方で、すでにグラグラしている歯は簡単に抜けることもあります。

抜歯後は骨を削ったり歯肉を縫合したりと様々な処置をおこないます。抜く本数により大きく異なり、1本数千円かかります。そのため抜歯があると、抜歯が無い場合の費用の2倍以上がかかることもあります。

犬を飼うためにかかる費用や、一般的な項目を解説している記事はこちらからご覧いただけます。

どうぶつ病院で行う犬の歯石取りの流れ

いざ愛犬の歯石を取る場合、動物病院では一体どのようなことが行われているか気になりますよね?診察から歯石除去の処置までの流れを見ていきましょう。

診察

獣医師が肉眼にて、愛犬の歯茎の状態、歯石の付き具合をチェックします。歯周病に関しては見た目だけではわかりません。歯周病の度合いをチェックできる試験紙などで判断することもできます。

歯石を取る必要があると判断した場合は、手術日程を決めて術前検査に進みます。術前検査では、愛犬が全身麻酔に耐えられるかどうかを確認します。血液検査や画像検査などで判断します。

歯の状態や根元を見るためは歯科用レントゲンが有効です。歯のレントゲンは無麻酔では撮影することができません。全身麻酔をかけた当日に撮影をし、判断します。

全身麻酔

手術のために全身麻酔をかけます。当日は食事をごく少量もしくは絶食です。静脈に留置針をいれ、点滴をつなげます。静脈から麻酔薬を入れて眠らせたら、気管チューブを装着しガス麻酔で麻酔を維持します。

歯科処置

まずは歯のレントゲン撮影を行います。歯の根元の状態をチェックし、既に根元が悪い歯は残しておくと歯周病がさらに進行します。そのため、抜歯する必要があるかを見極めてから歯石除去を行います。

歯の抜歯がある場合は、多根歯は歯の根元が分かれているため分割します。分割後、歯茎から歯を剝がしながら抜いていきます。抜歯後は骨を滑らかにして不要組織を取り除き、歯肉を縫合します。

抜歯の必要がない歯に関しては超音波スケーラーを使ってきれいに歯石を取っていきます。

ルートプレーニングおよびキュレッタージといって、歯の隙間である歯周ポケットを綺麗にします。この作業をしなければ、歯の見た目が綺麗になっても、口臭が取れません。

すべての歯石を取り除いたら、研磨をしていきます。研磨剤をつけて歯の表面をツルツルに仕上げていきます。研磨をしないと歯の表面がザラザラのため、歯垢が付きやすく歯石がまたできてしまいます。研磨が終わったら、歯周ポケットの部分に抗生剤の軟膏を入れて、処置は終了となります。

犬の歯周病の症状や体に起きる異変はこちらの記事で詳しく解説しています。

帰宅後に注意したいこと

歯を抜いた場合に関しては、痛みが生じたり顔が腫れたりすることがあります。その場合は痛み止めが必要になります。

また、ドライフードや硬いものを食べると痛みます。そのため抜歯をした場合は、1週間ほどは柔らかいご飯を食べると良いでしょう。

歯石を取った後は歯が綺麗なので、綺麗な状態を保つために歯磨きをしたくなります。しかし本格的な歯磨きに関しては、少なくとも2週間はしないでください。

歯茎を処置しているので、歯ブラシを使ってしまうと痛みや炎症が生じることがあるからです。2週間経って歯茎が健康な状態になってから、歯磨きをするようにしてください。

正しい歯磨きの仕方はこちらの記事でご覧いただけます。

獣医師が選んだ犬の歯磨きジェルはこちらの記事でご覧いただけます。

歳をとっても健康な歯を残すために

歯石をそのまま放置しておくと歯は悪くなる一方です。歯の根元が腐ってしまい、やがて骨が溶け出します。骨が溶けることによって骨折しやすくなります。

悪くなった歯の場所によっては、目の下に膿が溜まり皮膚に穴があいたり、くしゃみや鼻水が出たりすることもあります。

愛犬は自分で歯を磨く事はできません。年をとっても、できるだけは健康な歯を残してあげたいですよね。

健康な歯を残すために歯磨きはもちろん重要です。しかし既に付いてしまった歯石に関しては歯磨きで取ることはできません。歯根が悪くなってしまう前に歯石をとってあげることは、将来の歯を残すことにつながります。

愛犬のお口の臭いや歯石が気になるようであれば、一度かかりつけの動物病院の受診をお勧めします。全身麻酔をかけることなので、処置の方法や費用など不安な点はきちんと獣医師に説明を受けてから臨んでくださいね。

この記事を書いた人

千葉 恵
獣医師

日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事

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