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【獣医師が解説】犬を飼うためにかかる費用はどれくらい?一般的な項目を解説

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初めて犬を飼う時はワクワクしますよね。一緒にお散歩に行ったり、色々なところにお出かけしたり、楽しい生活が待っています。しかし犬と一緒に生活していく上で、食費や医療費、健康の維持にかかる費用も忘れてはなりません。小型犬、大型犬でもかかる費用は大きく変わってきます。

ここでは犬と一緒に生活していく上で費用がどのくらいかかるかについて解説していきます。

犬を飼うためにかかる費用項目

人間と同様に犬は生き物のため、病気にもなりますし、予想外のことも起きます。ある程度、生活に必要な費用の目安を知っておくと安心ですよね。まずは犬を迎えた際にかかる費用を見ていきましょう。

また、室内飼い・室外飼いどちらにするか検討中の方向けに、どちらがいいのかなどをこちらの記事で確認できます。

犬の登録費用

犬を飼った場合は法律上、犬の登録が必要になります。人間で言う住民票みたいなものですね。登録費用は3,000円程度かかります。市区町村に登録し交付された鑑札を常に装着することが法律で義務付けられています。

また、引っ越しをした場合は犬の再登録が必要になります。再登録の際は引っ越し先の役所に今までの犬鑑札を持参し、交換交付をします。交換交付の際には費用はかかりません。

避妊手術、去勢手術

避妊手術や去勢手術は将来子供を望む場合や、その他にもメリット・デメリットがあり、必ず行うものではありません。しかし、メリットが大きいため、手術を選ばれる方が多いです。

避妊手術や去勢手術をする場合はその分費用がかかります。動物病院によりますが、女の子の場合は避妊手術の費用的にはおよそ30,000円以上、男の子の場合は20,000円以上かかります。

避妊手術については、こちらの記事で詳しく解説しています。

男の子の場合、精巣がきちんと2つ降りていれば問題ありませんが、潜在精巣といって精巣がお腹の中に残っている場合があります。
その場合は、女の子と同様にお腹を開ける開腹手術になるため、追加費用がかかります。

去勢手術については、こちらの記事で詳しく解説しています。

また手術に伴い、術前検査として血液検査や画像検査などを行うこともあります。どこまで行うかによりますが、10,000円程度はかかりそうです。

犬を飼ったら定期的にかかる費用項目

先ほどはお迎えした際にかかる費用でしたが、続いては定期的にかかる費用に関して見ていきます。

狂犬病ワクチン

生後91日以上の犬に関しては、狂犬病予防法により狂犬病のワクチン注射が義務付けられています。この注射は法律で定められているものなので、必ず受ける必要があります。
病気等がない限り1年に1回、毎年打ちます。

人間と同様、集団接種や動物病院で個別に打つ方法があります。
費用に関しては、市区町村や獣医師会の所属の有無などによって変わってきます。
注射に関してはおよそ3,000円程度です。

また、注射を終えると、注射を終えた証明として注射済票をもらいます。
注射済票は役所に収めるお金で550円ほどです。

混合ワクチン

混合ワクチンに関しては法律で義務付けられていません。人間でいうところのインフルエンザのワクチンのようなもので任意です。

動物病院により混合ワクチンの種類が異なり、その分値段が異なります。予防するウイルスの種類が多いほど費用は高くなります。およそ6,000円~9,000円ほどの病院が多いです。

子犬の場合は初回ワクチンをペットショップで打っている場合が多く、追加で2~3回のワクチンを接種します。回数に関しては、初回ワクチンを打った週齢によって異なります。

成犬の場合は1年に1回ワクチンを打つ場合が多いですが、3年に1回を推奨している病院もあります。その場合は抗体検査などが必要になります。
感染しやすい地域、環境、犬の健康状態により獣医師と相談になります。

フィラリア予防

フィラリア症は蚊が媒介する寄生虫疾患です。そのため蚊が生息する時期にはフィラリア症の予防薬をお勧めします。

フィラリアの予防薬を処方する際は、血液検査を行います。既にフィラリアに感染している場合にはお薬が使用できないからです。検査費用は検査内容によりますが、2,000円程度の場合が多いようです。

フィラリア検査で陰性が認められた場合、毎月のお薬または1年間効く注射などを行います。

フィラリアの薬に関しては体重により異なります。選ぶ薬も、フィラリアのみに効果がある薬か、ノミやマダニ、消化管内寄生虫などの他の寄生虫にも効果がある合剤かで費用は異なります。

フィラリア単剤であれば1,000円程度~、合剤タイプだと3,000円程度~目安になります。
扱っている薬、内容、体重により大きく異なるので目安程度に留めてください。

フィラリア予防について詳しくはこちらの記事で解説しています。

ノミ、マダニ予防

外にお散歩に行く場合、ノミやマダニを体にくっつけてしまうケースが多いです。そのため毎月のノミ・マダニの予防をすることをお勧めします。最近ではフィラリアとの合剤タイプが人気です。

一般的にノミ、マダニ、フィラリアを予防できる合剤タイプを使ったほうが、フィラリアとノミ・マダニを別々に予防するよりも費用が安くなります。こちらも体重によりお薬の費用は異なります。1,500円程度が目安です。

健康診断

健康診断に関してはどこまで検査するかによって費用は異なります。

例えば子犬の場合、通常であればあまり病気にはなりません。一方で高齢になればなるほど、様々な病気にかかりやすくなります。そのため動物病院の獣医師と相談して、健康診断でどこまで検査をするか決めていきます。

血液検査はどこまで詳しく見るかによりますが、およそ10,000円程度かかります。ホルモン検査なども見るとさらに費用がかかります。

レントゲンやエコーに関しては枚数や部位にもよりますが、5,000円~10,000円程度です。尿検査や糞便検査はおよそ1,000円程度です。

健康診断の頻度としては、成犬では1年に1回、高齢犬では半年に1回を推奨します。
お水をたくさん飲む、体重の増減が見られる場合は早めの検診をお勧めします。

生活日用品

その他に、用意すると良いものとして、サークル、トイレ、食器、フード、ペットシーツなどが挙げられます。これらに関しては、どのようなものを選ぶかによって費用が大きくことなります。

食事に関しても、犬の大きさによって食べる量は異なります。
参考までに、一般社団法人ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査によると、1か月の食費の平均は3074円でした。大型犬では体重によって何倍も増えてきます。

ドッグフードの選び方と適正量はこちらの記事で詳しく解説しています。

犬を飼うためにかかる年間費用は144,240円

2020年度一般社団法人ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査(※)によると、犬に関する支出総額(医療費等含む)は1か月あたりの平均が12,020円、年間平均では144,240円です。

また、犬の生涯必要経費は寿命を14.48歳で計算すると2,073,531円になります。

中型・大型犬では平均寿命が13.6歳で2,317,319円、超小型犬では平均寿命が15.19歳で2,169,244円という結果でした。やはり大型犬の方が寿命は短いですが、費用はかかります。
(※)令和2年 全国犬猫飼育実態調査|全国犬猫飼育実態調査|一般社団法人ペットフード協会(「犬 飼育・給餌実態と支出」PDFのP.39~40 「20年度より犬の生涯必要経費」の項目より引用。)
   

家族が増えるとお金がかかります

人間と同様、犬が増えるという事は家族が1人増えるのと同じです。毎日の生活費や健康管理のために費用はかかります。

どのくらい費用をかけるかに関しては、特に正解はありません。大切なのは、愛犬が快適に生活するためにはある程度の費用がかかる事は知っておくことです。迎えてからこんなはずじゃなかった、となるとお互いが不幸になってしまいます。

犬の大きさによっても生活費は変わってきます。その点も踏まえてワンちゃんを選ぶのも1つですね。せっかく迎える愛犬なので、過ごしやすい環境で育ててあげたいですよね。

この記事を書いた人

千葉 恵
獣医師

日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事

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