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【獣医師が解説】愛犬の体臭がひどい…。犬の体臭対策はどうしたらいい?臭いの原因も解説

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一緒に生活していると、愛犬の臭いが気になってしまう事はありませんか?
犬は人間とは違う動物です。獣臭があるのは、ある程度は仕方がないことです。

しかし一緒に生活する上で、少しでもそういった臭いが軽減できたら良いですよね。
ここでは愛犬が臭う理由や対策についてお話ししていきます。

愛犬の体臭の原因を知ろう

愛犬が臭うといっても様々な原因があります。臭いの原因を解説していきます。

汗や被毛の臭い

汗は大きく2種類に分けられます。アポクリン汗線とエクリン汗腺です。

人ではアポクリン汗腺は、耳や脇、陰部等に限局して体臭の原因となります。
人では一部ですが、犬ではアポクリン汗腺が大半を占めています。

そのため、犬は汗をかくと、アポクリン汗腺が多いため臭いとベタつきを生じます。

お口の臭い

人と同様に口からの臭いが気になることがあります。
唾液や食物、腸内細菌のバランスなどよって口臭が生じます。

正しい歯磨きの仕方はこちらの記事でご覧いただけます。

これに関しては、ある程度は仕方がありません。お水を飲んだり食事を変えたりすることである程度の軽減が期待できます。

病的な口臭では、歯周病や内臓系の疾患が考えられます。特に3歳以上の犬の8割以上が歯周病といわれています。臭いがきつい場合は、歯周病菌による口臭が原因かもしれません。

また、腎臓などが悪い場合も口臭がすることがあります。飲水量や尿量が増えている場合は注意してください。

耳の臭い

健康な状態では耳はそれほど臭いませんが、外耳炎等の炎症があると臭いを放ちます。
耳にトラブルがない場合、通常耳垢は外側へ自然と出て行きます。

外耳炎がある場合は、耳の穴が狭くなったり、細菌が増えたりすることで、独特の匂いを放ちます。

耳の臭いが気になる場合は、綿棒を使わずにティッシュやコットンなどで指が届く範囲のみ軽く拭ってあげましょう。

それでも臭いが治まらない場合は、外耳炎などが疑われるため動物病院を受診してください。

肛門腺の臭い

犬には肛門線といわれる分泌物を出す腺があります。
犬同士がお尻の臭いを嗅ぎ合い、相手を認識したり威嚇をしたりする時に使われます。

便と一緒に自然に出せることもありますが、犬によっては肛門腺が自分で出しにくい場合があります。
その場合は飼い主さんやトリミング、動物病院などで絞ってもらう必要があります。

肛門を舐める、お尻を床に擦りつけるなどの行動があった場合は、肛門腺が溜まっている可能性があります。その場合は絞ってあげてください。

涙やけの臭い

愛犬の目周りの毛が茶色や黒に変色している事はありませんか?

涙が多く出てしまう場合、毛が濡れている状態になります。
毛の色が変色するだけでなく、濡れている部分は雑菌が繁殖しやすい状態です。

そのため生乾きのような臭いを放つことがあります

自宅でできる愛犬の体臭対策5つ

シャンプーをする

犬は人と違って毎日お風呂に入るわけではありません。アポクリン線が多いため、汗をかくと臭いを放ちます。
シャンプーをしてあげることによって、汗や皮脂が混ざった匂いを取ることができます。

歯磨きをする

フードやおやつを食べると歯垢として歯に付着します。
そのまま何日も放置してしまうと、歯石になってしまいます。

歯石が形成されると歯周病菌がたくさん増えてしまい、臭いを放ちます。
歯磨きをすることで、歯垢を除去することができ口臭の改善・予防につながります。

飼い主さんと獣医師が選んだ歯磨きジェルおすすめはこちらの記事でご覧いただけます。

肛門腺を絞る

肛門腺は自分で出せる子もいますが、肛門腺の性状によっては出しにくい子もいます。

肛門を時計に見立てたときに、4時と8時の方向に肛門線の袋があります。
肛門腺が溜まっていると、その部分を指で触ると少し膨らみを感じます。

膨らみを肛門に向かって挟むように押し出していくと、肛門線が出てきます。
うまく絞れない場合は、トリミングサロンや動物病院で行ってもらうと良いでしょう。

腸内環境を整える

食べているフードやおやつの成分によって排泄物や口臭の臭いが変わります。
これは腸内細菌のバランスが関わっています。

食べ物を変えることによって、腸内細菌バランスが整い、臭いの軽減が期待できます。
腸内細菌を整えるようなサプリメントも期待できそうです。

愛犬が使っているグッズをきれいに洗う

愛犬が普段過ごしているマットやおもちゃには、唾液などがたくさん付着しています。
衛生面の点も踏まえて、なるべくこまめに洗ってあげると良いですね。

犬の体臭の原因は病的な原因もある

病的な体臭の場合、お家でのケアだけでは対応が難しいです。
どんな原因があるかみていきましょう。

歯周病が原因

歯石がたくさん付着している、歯茎が赤い、腫れている場合などは歯周病が考えられます。
その場合は歯周病治療しないかぎり、歯磨きのみでは口臭を無くすのは困難です。

歯の根元の問題で臭いが放たれるため、表面だけを削るような歯石除去ではあまり効果はありません。

犬の歯周病の症状と体に起きる影響については、こちらの記事でご覧いただけます。

内臓系疾患からくる口臭

口臭は歯周病以外の病気でも発生します。
腎臓病など内臓系に問題があると体の中から臭いを放ちます。

飲水量や尿量が増える場合は注意してください。

皮膚病が原因

シャンプーをしても数日でフケが出る、体がベタベタする場合は皮膚病の可能性があります。
また、肌に合っていないシャンプーを使用している可能性もあります。

脂漏症といわれる脂でベタベタしたお肌の状態があります。
その場合は、マラセチアという菌が増殖しやすく、独特の臭いが発生します。

マラセチアはもともと皮膚に常在する菌ですが、皮脂を餌に増えるため脂漏症では特に増殖しやすくなります。
また、湿気が多くベタつく夏ごろに悪化する傾向があります。

脂漏症の場合は、適切なシャンプーや薬で治療します。
週に1回以上シャンプーをしないと体がベタベタする場合は、脂漏症の可能性があります。
その場合は、動物病院を受診してください。

多汗症

多汗症は、ヨークシャーテリアやミニチュアシュナウザーによくみられます。

多汗症の原因は様々です。
原因の一つとして、ストレスとの関連が考えられています。
思い当たるようなストレスがある場合はできる限りなくしてあげてください。

愛犬の体臭対策をするときの注意点

愛犬の体臭対策をお家でするには、いくつか注意しなければいけない点があります。事前に確認してから対策してあげてくださいね。

無臭を目指さない

犬は人間とは違います。毛に覆われていますし、汗の分泌も異なります。
そのため完全に無臭を目指そうとしないでください。
ある程度の獣臭は犬特有のものなので、無くすことはできません。

シャンプーをしすぎないで

シャンプーをすると皮脂や汚れ、汗などを洗うことができます。
そのため洗いたては良い匂いがします。

しかし、洗いすぎてしまうと皮膚のバリア機能が落ちてしまいます。
皮膚のバリア機能が落ちると、皮膚病になりやすく余計に皮脂が出てしまったり菌が繁殖してしまったりする可能性があります。

そうすると肌のベタつきや臭いの原因となり、さらにシャンプーをする悪循環になってしまいます。

愛犬に適度な頻度でやさしく洗うようにしてあげてください。
また皮膚病の場合は、適したシャンプーがあるのでご自身で判断せず、かかりつけの獣医師に相談する方が良いでしょう。

臭いが強い場合は動物病院へ

動物はそれぞれ特有の匂いがあります。若い時と比べて今の愛犬の臭いはどうですか?

唾液や汗など生理的な臭いはある程度は仕方がありません。
しかし異様に口の臭いがきつい、皮膚の臭いが強くなった場合は病的な可能性があります。

今回ご紹介した家でできるケアを行っても改善が見られない場合は、動物病院を受診した方が良いかもしれません。まずはできることから、やってみてくださいね。

この記事を書いた人

千葉 恵
獣医師

日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事

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